一般社団法人フードバンクママトコ

設立趣意書

 先進国の一員と考えられる日本は、工業が経済を支え、敗戦後の混乱から1973年のオイルショックまで長足の経済的発展を遂げてきました。急速な工業化による進歩とその世界的成功は、公害などの弊害を伴いながらも、その後のバブル崩壊まで続き、経済的困窮は局所的な問題と考えてきました。日本人の多くが経済的には、中流に属すると考えていた時代です。バブル崩壊が30年を超える長期的な低成長時代の前触れだったなど、誰も予測できませんでした。

 

 この長い経済的停滞は、経済的困窮を日本社会の局所的な課題から、慢性的なソーシャルイシュウと言わざるを得ないレベルに拡大し、深刻な状態になっています。日本の貧困率は 15%を超え、先進国の中でも“貧困大国”といわれる状況にあります。 本来、我が国の憲法の精神である生存権を保障するためのセーフティネットは、行政的機構として存在はしても、財政的制約などから十分機能し得ない状況が続いています。それに加えて生活保護自体を、権利ではなく自助努力の欠如とみなすようなムードが、本来行使すべき権利を忌避させることにもつながっています。さらに、日本社会の高齢化は、経済の長期停滞期と相まって急速に進行し、貧困問題の解決を困難にしていますし、高齢者世代自身も無視できない規模で経済的に厳しい状況に陥っている状況です。

 

 一方で1965年に75%であった日本のカロリーベースの食料自給率は、一昨年38%に低下しており、これも先進国の中で最低であり、内戦や政情不安により農業の維持自体がままならない国を除けば異常な状態と言えます。にもかかわらず、この国では食べられるにもかかわらず廃棄される食物=食品ロスは、年間推計621万t(事業系 339万t、家庭系 282万t)で、日本人が毎日お茶碗1杯分の食物を捨てていることに相当します。 

 

 熊本県における貧困の状況は、日本全体の状況と期をいつにして悪化しつつあったところに、2016年の熊本地震、2020年の熊本県南部を襲った大水害、2020年初頭から続く新型感染症の長期的流行が、その傾向を加速させ、社会的、経済的弱者を追い詰める一方です。私たちはこのような状況に対して、制度的な救済を希求するだけでなく、私たち自身が相互扶助の社会を目指しつつ、緊急性の高い困窮者、就中、窮状を訴える有効な手段を見出しにくい子供たちを助ける組織として、フードバンクママトコを設立します。

 

 活動の母体となる株式会社共同の祖業は物流業で、熊本県産の家畜、農産物を預かり運ぶ活動から出発し50年になります。2012年には熊本県産の牛、豚を加工する自前の工場も開設し、食に関わる事業の幅を広げてきました。経営理念として「共生社会づくりに貢献する」ことを掲げ、熊本の皆様に育てていただいてきました。フードバンク活動に欠かせない食品を作り、預かり、管理し、運ぶ活動の全てをやっている会社が、現在、目の前で起きている危機的な状況を見えないかのごとく振る舞うことは、そもそも自らの経営理念を真っ向から否定する行いであると考えるに至りました。

 

 熊本で既に活動されているこども食堂の運営組織、その活動を支えている市民の方々と一緒になって、さらには、日本各地で貧困と食品ロスの問題解決に取り組む組織に学びながら、この困難なしかし緊急性の高い課題解決の一翼を担っていきたいと考えています。

 

2021 年 5 月 15 日

一般社団法人フードバンクママトコ